ジョブハンティング! 弁護士、派遣、社畜、銀座ホステス、いろいろやってみた。

元派遣、氷河期世代かつ団塊ジュニアの弁護士が外資系や大中小企業など40社以上で働いた経験をもとに、氷河期世代を取り巻く諸問題、40代派遣・フリーターから正社員へのステップアップのコツ、日々思ったことなどを綴っていきます。

その解雇、無効かもしれませんよ!

こんにちは。ヴィヴィアンです。

ちょっとずつ涼しくなってきて秋の気配を感じるようになりました。といっても、まだまだ暑いですけどね。

前回↓は有給休暇についての誤解あれこれについて書いてみました。

vivien-moriya.hatenablog.com

私は有休は使わずに貯める派なのですね。なぜって、会社や上司や同僚や若手にキレたりして辞めたくなった時に即日辞められるようにしておくためです(笑)。以前勤めていた会社でも、「お疲れ様です。●月●日付で退職することにしました。本日が最終勤務なのでよろしく!」と人事にslackで連絡したことがあります(笑)。いや~、だって、この会社ひどかったからね。残業代も出なかったし、安い給料で他の人の何十倍も働かされましたから。退職の意思表示から2週間経過したら雇用契約は終了しますので、最低でもその2週間を埋めるための有給休暇(10日間くらいですね)を残すようにしているわけです。

 

さて、今回は解雇について書きたいと思います。

解雇については、多くの人が、日本では解雇は簡単にできない、という認識をお持ちだと思います。この認識は正しいといってよいと思いますが、企業で働いていると、人事や法務の人がトンチンカンなことを言っているのを耳にすることが多いのです。

また、つい先日、ある弁護士が書いた解雇についてのネット記事を読んでみたところ、書き方が分かりにくくミスリードするような内容になっていたんですね。ヤフコメを見てみたら、案の定、多くの人が勘違いしているようでした。法律事務所のサイトでも解雇について解説しているものがありますが、細かすぎるんですよね。あれを正しく理解できるのは弁護士だけだと思います。

 

日本では簡単に解雇できないと認識されている割には、けっこう誤解が多いため、解雇について最低限知っておきたい基礎知識をまとめてみました。かなりざっくりですけれど、これすらほとんどの方が知らないのではないでしょうか?会社側からの視点で書いていますが、解雇される側も当然知っておいた方が良い内容です。

 

目次:

解雇するために検討すべきこと

解雇したい従業員がいる場合に主に検討すべき事項は以下の通りです。

①解雇事由該当性の検討(就業規則)

②解雇権又は懲戒権の濫用に当たらないか検討(労働契約法16条、15条)

③解雇予告手当と即日解雇について(労働基準法20条、21条)

 

以下にそれぞれ説明していきますね。

解雇事由該当性の検討(就業規則)

解雇には普通解雇と懲戒解雇がありますが、両者の違いを意識する必要はないと思います。

就業規則に解雇と懲戒についての定めがそれぞれあり、懲戒の規定のところに懲戒解雇についての定めがあるはずです。そして、解雇のところに解雇事由が列挙され、懲戒解雇のところに懲戒解雇事由が列挙されているのが一般的な規定の仕方です。この列挙されている解雇事由の中に該当するものがないか検討するのです。

 

普通解雇事由に該当する場合、懲戒解雇事由に該当する場合、両方に該当する場合がありえます。たとえば、能力不足で仕事ができないというケースでは、普通解雇事由に該当するのが通常です。

解雇権又は懲戒権の濫用に当たらないか検討(労働契約法15条、16条)

就業規則に定める解雇事由に該当することを確認したら、次は解雇権の濫用に当たらないかの検討が必要です。つまり、労働契約法16条により解雇が無効にならないかの検討ですね。(細かいですが、懲戒解雇の場合、15条の懲戒権の濫用に当たらないかの検討も必要です)

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は解雇は認められません。この判断は非常に難しく、素人では不可能ですので、弁護士に相談する以外に方法はないと思ってください。

 

就業規則に定める解雇事由に該当すれば直ちに解雇できると勘違いしている人がいるようですが、間違いです。労働契約法15条又は16条の検討を忘れないようにしてください。

就業規則を労基署に届け出ている以上、就業規則に書いている範囲で自分たちの好き勝手にできるはずだ!就業規則に記載している解雇事由に該当していれば自由に解雇できるはずだ!とのたまった人事のお偉いさんがいたのですが、日本は法治国家ですので、就業規則だけでなく、法律も守らなければなりません。

 

(なお、蛇足ですが、解雇事由該当性の問題は客観的合理性の問題にすべて包含されるという考え方もあります。このブログでは分かりやすくするために形式的な該当性の問題と客観的合理性の問題を別々に書いていますが、やっていることは同じです。)

解雇予告手当と即日解雇について(労働基準法20条、21条)

解雇権の濫用(懲戒解雇の場合は懲戒権の濫用も)に当たらないことを確認したら、次は労働基準法20条の話ですね。解雇する場合、30日以上前の予告をする必要があります。もし予告の日数が30日に足りない場合には、足りない日数分の平均賃金の支払をする必要があるのですね。(なお、21条で20条の解雇予告の規定が適用されない場合が規定されています。)

 

ただし、例外があります(労基法20条1項但し書き)。天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合には、解雇予告をせずに即日解雇できる可能性があるのですが、これをするには、労働基準監督署長の除外認定を受ける必要があります(労基法20条3項)。この除外認定を受けるのはハードルが高いですし面倒ですので、わざわざ即日解雇するメリットはないのではないでしょうか。

 

あのクズ野郎!絶対即日解雇にしてやる!と息まいている経営陣を見たことがありますが、たった30日ですよ?なんで待てないのよ?採用したのはテメェだろうよって思いました。日本で解雇できるだけラッキーだと思わないと。

 

労基法20条に関してよくある勘違い①

労基法20条1項但し書きに該当すれば、つまり、天災の場合や労働者に帰責性がある場合には、除外認定を受けずに直ちに即日解雇できると勘違いしている人が多いのですが、これは上記のとおり誤りですからね。

 

労基法20条に関してよくある勘違い②

この労基法20条は、先ほど説明した労働契約法の規定により解雇が無効にならないことが当然の前提になっています。にもかかわらず、解雇予告手当さえ支払えば労働契約法の規定を考慮せずとも常に解雇ができると勘違いしている人の多いこと!これは間違いですので、皆さん、気を付けてくださいね。

 

 

以上に挙げたほか、法律で解雇が禁止されている場合がありますので、これに当たらないことも当然の前提です。

また、労働組合との間に解雇同意約款・協議約款がある場合はこれについての検討も必要ですし、また、退職金の支払いをどうするのかなどの確認も必要でしょうね。

 

いやぁ~、解雇って面倒ですよね。

ざっと、ポイントだけを簡単に書いたつもりですが、そのポイントすら一般の人には理解するのは難しいのではないかと思います。

後からトラブルにならないためにも、解雇したい従業員がいる場合は、必ず事前に弁護士に相談するべきです。訴えられたりしたら、結局大金を払って弁護士を雇わなければならなくなるのですから、それを考えれば、事前に弁護士に相談する方が安くつくかもしれません。ケチらないことです。解雇されそうな従業員の方も、解雇される前に直ちに弁護士に相談するようにしましょう。証拠を取っておくためにも解雇前がよいです。

弁護士でも労働法について詳しくない人もいますので、ある程度詳しい弁護士を選んで相談するようにしましょう。

 

以上となります。私は実は、日本の解雇規制は度が過ぎると考えています。もっと解雇のハードルを下げるべきだと思っています。

これまで、仕事をさぼっている人や、無能な人のために彼らよりも同等か安い給与で食事もとらず睡眠もとらず、彼らの代わりにひたすら働かされてきました。仕事しない(できない)のならば、いる意味がないですから、彼らをクビにして彼らの給与を私に支払うか、まともな人材を採用するか、どちらかにすべきです。私は、無能な人ややる気がない人の代わりに働いて彼らの生活の面倒を見てあげるために、司法試験の勉強をして弁護士資格を取ったわけではないし、仕事を終えた後や、休日や年末年始、GWのみんなが遊んでいる時間に法律知識やスキルをアップデートして自己研鑽に励んでいるわけではないんですよ。サボったもん勝ち、無能なもん勝ち、ってふざけんのもいい加減にしてほしいですよ。